お香典返しとは、通夜葬儀でお香典をいただいた方へ後日、お礼の品物を贈ることを言います。「後日」とは一般に、仏式では四十九日(七七日忌)の忌明け法要を迎えた後、神式では忌明けの霊祭(五十日祭)、キリスト教では一ヶ月後の召天記念日を目安とし、挨拶状を添えてお礼の品物を送ります。
 一方、都市部を中心に近年増えているのが「即日返し」といわれるもので、通夜葬儀当日に、香典の金額に関係なく一律の品物をお返しすることを言います。(当日返し・その場返しとも呼びます)。
これに対して従来の方式を「後日返し」と呼ぶようになりました。

ここでは即日返しと後日返しのメリット・デメリットをご紹介します。また、贈る品物もご紹介いたしますので、香典返しの商品選定にお役立てください。

お香典返しの方法とそれぞれの違い

方式後日返し(従来の方式)即日返し(当日返し)
摘要通夜・葬儀当日には、あくまで会葬いただいたことへの感謝のしるしとして「会葬礼状」と「会葬御礼品」のみをお渡しする。
そして香典をいただいた方には後日(四十九日法要等が済んだ後)に「香典返し」として御礼品を送付する。
通夜・葬儀当日に相当額の「香典返し」の品(2,000~3,000円程度)を用意しておき、香典をいただいた方には「会葬御礼品」とともに「香典返し」をお渡しする。

ただし高額の香典をいただいた人には従来通り「後日方式」で、四十九日法要等が済んだ後に挨拶状を添えて御礼品を送付する。
メリット
  • 相手方に応じた商品の選択が可能
  • 頂いた香典の金額に応じた商品の選択が可能
  • 会葬者が通夜葬儀日に「複数」の品を持ち帰る負担がない
  • 長年定着した方法であるので、理解が得やすい
  • 香典帳の整理が不要で、高額香典者に対してのみ商品の選択をおこなえばよい
  • 葬儀代金として計上可能なので相続税の金額控除となる
デメリット
  • お香典帳の整理が必要で、郵便番号や電話番号などを調べる手間がかかる
  • 相手や香典金額に応じた商品選定が必要となる
  • 葬祭費用とならないため、相続税の金額控除対象とならない
  • 相手方に応じた商品の選択が不可能
  • 頂いた香典の金額に応じた商品の選択が不可能
  • 通夜・葬儀日の会葬者が「複数」の品を持帰る負担がある
  • 当日のお渡した品が「香典返し」として理解されにくい

お香典返しの金額の目安と品物

お香典返しはいつ送るか

七七日(49日)や五七日(35日)を満中陰といい、この日をもって忌明けとします。この時、お香典のお返しをするのが一般的です。ただ近年は通夜・葬儀の当日に一律金額の品をお渡しする「即日返し」が増えており、その場合は頂いたお香典が高額の方のみ、満中陰の時期に挨拶状と御礼品を送付します。

お香典返しの金額の目安

香典返しは通夜葬儀当日に一律の品をお渡しする「即日返し」が増えています

お香典は本来、故人の冥福を祈って手向ける香のかわりに霊前に供えるものですが、同時に、相互扶助的な意味合いもあります。したがって、忌明けを通知するご挨拶状に感謝の心を記せば、お返しをしなくても失礼にはあたりません。
最近は、お香典返しに充てる費用を社会福祉施設などに寄付するケースも増えています。その場合も、ご報告をかねたご挨拶状を発送します。

お返しをする場合、従来のしきたりでは一般的には「半返し」といっていただいたお香典金額の半分位、一家の主人が亡くなった場合は3分の1くらいをお返しします。
また近年増えている「即日返し」の場合は通夜葬儀当日に一律2,000円~3,000円程度の品を「香典返し」として準備し、「会葬御礼品」とともにお渡しします。ただし頂いたお香典が高額の場合は、従来通り後日に挨拶状を添えて御礼品を送付します。

お香典返しの品物

香典返しには、銘茶、タオル、陶器、寝具、石けんなどが一般的ですが、必ずしもこれにこだわることはありません。会社などの場合は、みんなで分けられるお茶やお菓子なども適しています。また、最近では靴下、ハンカチなども多いようです。

香典返しと法事の「掛け紙」

香典返しに使う「掛け紙」は宗派・地域により変わります。

「熨斗(のし)紙」と「掛け紙」

一般的な進物には、水引が印刷された「掛け紙」を使います。
お祝い事には縁起物の飾り「熨斗(のし)」が印刷された慶事用の印刷掛け紙を使い、これが「熨斗(のし)紙」と呼ばれます。
一方、弔事の時は熨斗(のし)が印刷されていないものを使いますので、「熨斗(のし)紙」とは呼ばず「掛け紙」と言います。
香典返しは弔事ですので、飾りの「熨斗」は不要ですが、水引が描かれた「掛け紙」は必要です。きちんと掛けて感謝の気持ちを贈りましょう。

掛け紙の中で「のし」が
ついたものが「のし紙」

弔事には「のし」のない
掛け紙を使う

蓮の絵入り・絵なし

蓮の絵が入った「蓮絵入」は、仏教の通夜・葬儀告別式・法要時の際に、喪家に対して贈る弔慰品や喪家から香典返しに用いられるものです。
一方、蓮の絵のない「蓮絵なし」は、仏教・神道・キリスト教など各宗教共通で同様に用いられます。
また仏教においても、通夜・葬儀告別式に「蓮絵入」を用いても法要時に「『蓮絵入』では喪の意味合いが強過ぎる」との理由で「蓮絵なし」や「黄水引(次項参照)」を用いる場合があります。

蓮の絵が無いものは、宗教を問わず使えます

水引の色(黄水引について)

一般的に弔事の水引は黒白の「佛水引」が用いられていますが、関西の都市部や山陰、北陸地方の一部では黄白の水引「黄水引」が用いられています。「黄水引」は各宗教共通です。
現在では「蓮絵なし」と同様、法要時に「『佛水引』では喪の意味合いが強過ぎる」との理由で、「黄水引」を用いる地域が増加してきています。

佛水引の掛け紙(結び切り)
佛水引(黒白の水引)

黄水引の掛け紙(結び切り)
黄水引(黄白の水引)

仏教以外(神道やキリスト教など)の通夜・葬儀告別式・法要時の際には、「仏」のイメージが強い「佛水引」は避けて「黄水引」を用いる方が適切と言えるでしょう。
水引は、一度きりにしたいという気持ちを込め「結び切り」を使用し、2本・4本・6本の偶数を使用します。

表書きの文字の濃さについて

弔事で薄墨を使用する理由は、「涙で墨が薄くなってしまった」「急いで駆けつけたためにしっかりと墨をする時間がなかった」等と言われています。ですので薄墨を使うのは基本的に通夜・葬儀(告別式)から四十九日を迎える前までで、四十九日以降は濃く書く場合が多いようです。
香典返しの掛け紙は薄墨・濃墨どちらでも良いとされています。ただし地域や宗派によっては「四十九日まで薄墨」というところもあります。逆に、通夜葬儀でも薄墨を使わない地域(主に京都)もありますので、その地域や宗派のしきたりの有無を事前に確認しておくと安心です。
ただしいずれの場合も、「表書き」とその下に書く「名前」の濃さは揃えるようにします。

掛け紙の例

仏教

用紙蓮絵入
(絵なしも可)
表書き
水引黒白 結び切り
用途一般、香典返し
用紙蓮絵入
(絵なしも可)
表書き忌明
水引黒白 結び切り
用途四十九日の返礼
満中陰志の掛け紙(蓮絵入り)
用紙蓮絵入
(絵なしも可)
表書き満中陰志
水引黒白 結び切り
用途四十九日の返礼
(主に西日本)
用紙蓮絵入
(絵なしも可)
表書き初盆
水引黒白 結び切り
用途初盆の返礼
用紙蓮絵入
(絵なしも可)
表書き一周忌
水引黒白 結び切り
用途一周忌の返礼
用紙蓮絵入
(絵なしも可)
表書き○回忌
水引黒白 結び切り
用途回忌法要の返礼

仏教以外(神教・キリスト教など)

用紙蓮絵なし
表書き
水引黄白 結び切り
用途一般
用紙蓮絵なし
表書き偲草、偲び草
水引黄白 結び切り
用途一般